第2話 “KISSME?"
SHIVAS(司馬正人:しばまさと)のデスクに巨大なピンク色のキスマ-クが送られてきた時には、YKM型ウィルスが既に蔓延してしまった後だった。
明らかにウィルスなのだが、その完全に人を食った様な態度がなんだか無性に気に入って思わずクリックしてしまった。唇を。
「アリガトウ♪」
妙に艶っぽい女の声がスピ-カ-から流れ、ピンク色の唇が遠ざかっていき、やがて女のシルエットに変化し、筆記体のMameという文字が残ってやがてそれも消えていった。
そしてあっさりとデ-タを持っていかれてしまった。
進入者の残したログを丁寧に消して、何事も無かったふりをして仕事を続けようと思ったが、良く考えたらSHIVASの仕事はネットのセキュリティ管理なのだった。
駄目だな、俺。やっぱ向いてねえよ。
ひとりごちて取り敢えずさっきの「Mame」の正体を突き止めてみる事にした。
セキュリティのコンピュ-タにアクセスするのだから、よっぽどの腕前のハッカ-か……YMK型新種ウィルス――ログに良く登場するパタ-ンからKMRウィルスと名付けられた――の感染者だろう。感染者はファイアウォ-ルを素通りできてしまうので、凄腕のハッカ-と同レベルのハッキングが出来る代わりに、感染者自身の情報も丸見えになるという欠点があるのだが。
と、言う事は、ここのサ-バも、SHIVAS自身も感染している可能性がある。
で、アクセスログを辿ってみようとして、それはさっき自分で消した事を思い出した。
やっぱ向いてねえのかなぁ。
取り敢えず感染したかしてないかだけでも調べて上に報告しとかないと。
何故か建設会社の経理部のアドレスで配布された謎のウィルスチェッカ-で調べたところ、ここのサ-バ自体は既に3度ほど感染していたが、SHIVAS自身は何故か感染していなかった。
KMRウィルスには抗体があるらしい……。
そう言えばそんな話を聞いた。
何処でだったかな……。